Cox Regression Analysis
- 分析手法の種類
- 予測する
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- 比較する
- 分類する
- 集計する
- 可視化する
特定の事象が起こるまでの時間を分析
Cox回帰(Cox比例ハザードモデル、Cox proportional hazards model)は、生存時間分析で広く使われる統計モデルです。このモデルは、特定の事象(死亡、疾患の発生、システムの故障など)が起こるまでの時間を分析し、その事象に影響を与える変数(共変量)の影響を評価するために使用されます。Cox回帰は、データが正規分布に従う必要がなく、非パラメトリックな方法で時間に対するリスクをモデル化できる点が特徴です。
Cox回帰は、観測期間中における事象の発生のハザード(危険度)を共変量に基づいてモデル化します。ハザード関数は、特定の時間において、事象が発生する瞬間のリスクを表します。
このモデルは、共変量がハザードにどのような影響を与えるかを評価します。特に、共変量が1単位増加するごとに、ハザードが何倍になるかを解釈することができます。これは、ハザード比(Hazard Ratio, HR)として知られています。共変量が1単位増加するごとに、事象の発生リスクがどれだけ変化するかを示し、ハザード比が1より大きければ、リスクが増加し、1より小さければリスクが減少することを意味します。
Coxモデルの基本的な仮定は、時間に関係なく、共変量によるハザードの比率(ハザード比)が一定であるという比例ハザードの仮定です。これは、共変量が時間とともにリスクに対する影響を変えないことを意味します。この仮定が破られる場合、Coxモデルは適切に共変量の影響を評価できなくなる可能性があります。この逸脱は、共変量が時間とともに異なる影響を持つ場合に発生します。
共変量が時間とともに変化する場合は、時間依存の共変量を導入することで、より柔軟なモデルが構築でき、ハザードへの影響を正確に捉えることが可能となります。
ソフトウェア
SPSSではAdvanced Statisticsオプションによって、Cox回帰を含む生存時間分析に対応します。Rでは、survivalパッケージのcoxph()関数を使用してCox比例ハザードモデルを実行できます。結果の視覚化にはsurvminerパッケージも有効です。Pythonでは、lifelinesやscikit-survivalなどのライブラリを使用します。
参考文献
- Kaplan, E. L., & Meier, P. (1958). “Nonparametric Estimation from Incomplete Observations”Journal of the American Statistical Association, 53(282), 457-481.
- Cox, D. R. (1972). “Regression Models and Life-Tables.” Journal of the Royal Statistical Society: Series B (Methodological), 34(2), 187-220.
- Hosmer, D. W., Lemeshow, S., & May, S. (2008). “Applied Survival Analysis: Regression Modeling of Time-to-Event Data”Wiley-Interscience.
- 対馬 栄輝(2018),SPSSで学ぶ医療系多変量データ解析,東京図書
- 中村 剛(2018), 新版 Cox比例ハザードモデル (医学統計学シリーズ 3),朝倉書店
- 杉本 知之(2021),生存時間解析 (統計解析スタンダード) ,朝倉書店