Paired-samples t-test
- 分析手法の種類
- 予測する
- 要因を探る
- 比較する
- 分類する
- 集計する
- 可視化する
対応のある2群の平均値の比較
t検定(t-test)は、検定統計量t値を利用する検定手法の総称で、2つのグループ間の平均値の差の検定を行う場合によく利用されます。対応のあるサンプルのt検定(Paired-samples t-test)は、比較するサンプルに対応がある場合のt検定です。前後の比較など、同じ対象について2つの測定値をペアにして比較する際に使用されます。
例えば、治療の効果を調べることを目的として「治療前」と「治療後」の2つのグループの検査値を比較するためにt検定を行います。このとき、治療前後の検査値の変化をみるために、同じ被験者について治療前と治療後の2時点で検査値を測定します。「治療前」と「治療後」のグループのサンプルには対応があるため、対応のあるサンプルのt検定を用います。
対応のあるサンプルのt検定を実行する場合、データセットの持ち方は横持ち(変数グループ/ワイド形式)である必要があります。データの持ち方が縦持ち(ケースグループ/ロング形式)になっている場合は、データの再入力または再構成を行う必要があります。
独立したサンプルのt検定と同様に、有意差が認められた場合は、母集団において2つのグループ間の平均値の差が0ではないことを意味するのみであり、どの程度の差があるかまでは分かりません。そこで、差の95%信頼区間を用いて、2つのグループの差の大きさの推定や効果量による評価も重要です。
対応のあるサンプルのt検定は、2つのグループの量的従属変数の差が正規分布にしたがう「正規性」の仮定を持ち、この仮定を大きく逸脱する場合はノンパラメトリック検定として、ウィルコクソン符号付順位検定(Wilcoxon signed rank test)を適用する方法があります。
ソフトウェア
SPSSでは、基本機能のBaseのみで実行可能です。Rでは、t.test()関数を使って対応のあるt検定を実行します。Pythonでは、scipyライブラリのttest_rel()関数を使用することができます。
参考文献
- Student (1908). “The Probable Error of a Mean.” Biometrika, 6(1), 1-25.
- Cohen, J. (1988). “Statistical Power Analysis for the Behavioral Sciences.” Lawrence Erlbaum Associates.
- 東京大学教養学部統計学教室(1991),統計学入門 (基礎統計学Ⅰ),東京大学出版会
- 大久保街亜,岡田謙介(2012),伝えるための心理統計: 効果量・信頼区間・検定力,勁草書房
- 対馬 栄輝(2018),SPSSで学ぶ医療系多変量データ解析,東京図書