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IBM SPSSによるデータ分析、情報活用

Kruskal-Wallis検定後の多重比較の手法

3群以上の独立したサンプルのノンパラメトリック検定
Kruskal-Wallis test(クラスカル・ウォリス検定)は、3群以上の独立したサンプルの比較を行うノンパラメトリックの検定手法です。正規性を仮定できない場合や外れ値を多く含む場合、サンプルサイズが小さい場合などに用いられますが、1元配置分散分析と同様、群全体での差の比較を行うため、有意差を認めたとしても、具体的にどの群間に有意差が認められるかは分からないため、事後の比較として多重比較の手順を必要とします。
多重比較の手法としては、Steel-Dwass test(スティール・デュワス検定)や Mann-Whitney U test(マン・ホイットニーのU検定)による2群比較を行ってBonferroni(ボンフェローニ)による調整を行う方法などが知られていますが、IBM SPSS Statistisのノンパラメトリック検定のメニューを使用すると、Kruskal-Wallis検定の後の多重比較が自動的に行われます。

1SPSSにおけるKruskal-Wallis検定の手順

多重比較のペアごとの比較を自動で行う場合

IBM SPSS Statisticsのノンパラメトリック検定のメニューでは、検定手法を具体的に指定しない場合、独立変数の水準の数によって、水準数=2ではMann-WhitneyのU検定水準数>=3ではKruskal-Wallis検定が自動的に実行されます。ただし、「検定のカスタマイズ」を選ぶことで検定手法を指定することができます。

Kruskal-Wallis検定と多重比較の指定

  1. 「分析」メニュー >「ノンパラメトリック検定」 > 「独立サンプル」を選択します
  2. 「フィールド」タブを開きます
  3. 「検定フィールド」に「従属変数」を指定します
  4. 「グループ」に「独立変数」を指定します
  5. 「設定」タブを開きます
  6. 「検定のカスタマイズ」を選択します
  7. 「Kruskal-Wallis(kサンプル)」を選択します
  8. 「複数の比較」が「すべてのペアごと」になっていることを確認します
  9. 「実行」ボタンをクリックします
SPSSによるノンパラメトリック検定の設定画面

以上の設定で、Kruskal-Wallis検定が実行され、全体の有意差が認められる場合は「すべてのペアごと」の比較が行われ、各水準間の検定結果が出力されます。

2検定結果の確認

Kruskal-Wallis検定

Kruskal-Wallis検定の結果は、以下のような要約表が出力されます。この例では、治療法(3水準)による測定値(連続変数)の差の検定結果として、有意確率P<.001 であり、帰無仮説は棄却され有意差が認められます。

SPSSによるKruskal-Wallis検定の要約
SPSSによるKruskal-Wallis検定の詳細

また、詳細のテーブルにKruskal-Wallis検定結果の詳細が表示されます。

3検定結果の確認

ペアごとの比較 (多重比較)

ペアごとの比較では、2群間の組み合わせで検定が行った有意確率と、ボンフェローニ調整によって修正された調整済み有意確率が表示されます。この例では、治療法Aと治療法B(調整済み有意確率P=.000)、治療法Aと治療法C(調整済み有意確率P=.000)に有意差が認められますが、治療法Bと治療法Cの間には有意差を認めません(調整済み有意確率P=.250)。検定は3通り行っていますので、調整前の有意確率P=.083を3倍したものになっています。

SPSSによる多重比較の結果

2群間の差を比較するノンパラメトリック検定としては、Mann-WhitneyのU検定がよく利用されますが、IBM SPSS Statisticsのノンパラメトリック検定のメニューで自動的に実行される2群間の検定結果は、Mann-Whitney U testではなく、Dunn test(ダン検定)によって計算されています。したがって、この検定に使用した統計手法の説明に、Dunn または Dunn-Bonferroniの方法と記載します。

IBM SPSS Statistics Algorithms.pdf(英語版のみ):PDF776枚目
The Kruskal-Wallis, Friedman and Kendall, and Cochran tests use the procedure proposed by Dunn (1964) (originally designed for the Kruskal-Wallis test). The procedure uses ranks (or successes for the Cochran test) based on considering all samples rather than just the two involved in a given comparison.

4その他の多重比較の方法

多重比較としてDunn検定以外の方法を指定する場合

Dunn検定ではなく、Mann-WhitneyのU検定を用いた多重比較を行いたい場合は、過去のダイアログメニューから個別にノンパラメトリック検定を実行し、手計算でボンフェローニ調整を行います。

過去のダイアログの使用

  1. 「分析」>「ノンパラメトリック検定」> 過去のダイアログ」>「2個の独立サンプルの検定」を選択します
  2. 「検定変数リスト」に「従属変数」、「グループ化変数」に「独立変数」を指定します
  3. 「範囲の定義」ボタンをクリックします
  4. グループ変数の値の範囲として「最小」と「最大」を指定します
  5. 「Mann-WhitneyのU」が選択されていることを確認します
  6. 「OK」ボタンをクリックします
SPSSによるMann-Whitney検定の設定画面

この手順を比較したい2群同士(治療法Aと治療法B、治療法Bと治療法C、治療法Cと治療法A)で繰り返して実行し、出力された有意確率を検定回数(この例では3回)によって調整して、有意性を判断します。

SPSSによるMann-Whitney検定の結果
以上のように、IBM SPSS StatisticsのKruskal Wallis検定では、全体での有意差が認められた場合にペアごとの比較を行う多重比較が実行されます。ただし、このように全体の検定を行ってから多重比較を行う2段階の検定方法は、検定を繰り返す多重性の問題も持ち、各群間の差を調べたい場合は全体の差の検定を先行する必要はありません。この場合、Mann-Whitney U 検定などの2群の比較を行う検定手法を用いてBonferroni(ボンフェローニ)調整を行うなど、初めから多重比較を実行します。
SPSSのノンパラメトリック検定のメニューでは全体の差が有意だった場合にのみペアごとの多重比較が実行されるため、全体の差が有意でなくても各群間の差を調べたい場合は、過去のダイアログを使用して個別に2群間の検定を実行し、手計算で多重比較を行う方法があります。なお、ボンフェローニ調整は保守的な調整方法であるため、その改良版であるHolm(ホルム)法などの他の調整方法を採用することも可能です。

参考文献

  1. IBM SPSS Statistics Base
  2. IBM SPSS Statistics Algorithms, p.776
  3. Dunn, O. J. 1964. Multiple Comparisons Using Rank Sums. Technometrics, 6, pp.241-252. https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/00401706.1964.10490181
  4. Can SPSS perform a Dunn’s nonparametric comparison for post hoc testing after a Kruskal-Wallis test?/IBM Support https://www.ibm.com/support/pages/can-spss-perform-dunns-nonparametric-comparison-post-hoc-testing-after-kruskal-wallis-test
  5. 独立サンプルのノンパラメトリック検定にある、[Kruskal-Wallisの一元配置分散分析ANOVA]の[複数の比較]を設定した場合の出力について IBM Support

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